December 01121999

 福助の頭は空つぽや十二月

                           小泉八重子

助人形。「福助足袋」の広告で有名になったキャラクターだが、元来は江戸期より幸福招来の縁起ものとして、水商売の店などに飾られていた。句では、師走の正月用意の一つとしての足袋購入が意識されており、水商売のイメージはないと思われる。それにしても「福助」の頭の中が「からつぽ」とは、意表をついた発想だ。私など、一度もそんなことを思ったこともない。でも、言われてみると、なるほど「からつぽ」みたいに見えてくるから妙だ。頭が大きいので、なおさらである。もしも「福助」と話す機会があったとしても、どんな話をしたらよいのか、見当もつかない。そんな感じがしてくる。とにかく不思議なセンスで書かれた句ではあるが、 十二月とのマッチングが愉快だ。ちなみに、天下に「福助」キャラクターを有名にしたのは、大阪の川柳作家であった広告文案家の岸本水府である。この人は後に「グリコ」でも活躍し、「コドモハカゼノコ グリコノコ」「オザウニイハヘ グリコモイハヘ(お雑煮祝え、グリコも祝え)」などのコピー(豆文)を書いている。このあたりについては、田辺聖子著『道頓堀の雨に別れて以来なり』(中央公論社・1998)に詳しい。『遠望』(1989)所収。(清水哲男)




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