November 20111999

 木枯しや小学生の立ち話

                           藤堂洗火

ろそろ夕暮れに近いころの情景だろう。下校途中の小学生が、強い北風に吹かれながら立ち話をしている。通りかかった作者は「こんなに寒いのに、わざわざ立ち止まって何の話をしているのだろう」と一瞬訝りながら、傍らを通り過ぎた。ただそれだけのことなのだが、巧みなスケッチ句だ。「子どもは風の子、元気な子」と言うが、そんなふうに作者はとらえていない。むしろ寒さを我慢しながら熱心に話している様子が印象的だったからこそ、こういう句に仕上がったのだと思う。そういえば子どもだったころ、たいした話でもないのに、寒くてもよく立ち話をしたっけな。そんな大人の郷愁を誘うようなシーンでもある。ところで、立ち話をしているのは男の子だろうか、それとも女の子だろうか。私には、なんとなく髪の毛を押さえながら話している女の子同士の感じがする。「そりゃ女の子に決まってるよ。なんてったって、主婦の予備軍だもの」。誰ですか、そんな失礼なことを、今つぶやいたのは……。(清水哲男)




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