November 12111999

 どぶろくの酔ひ焼鳥ももう翔ぶころ

                           園田夢蒼花

語は「どぶろく(濁り酒)」。新米を炊いて作ることから、秋の季語とされてきた。多くは密造酒なので、酒飲みには独特の情趣が感じられる季題だ。後ろめたさ半分、好奇心半分で、私も何度か飲んだことはある。当たり外れがあり、すぐに酸っぱくなるのが欠点だ。ところで、作者はまことに上機嫌。焼いている雀か何かが間もなく飛翔するかに見えるというのだから、快調な酔い心地だ。この場に下戸がいたとすると、冷たい目で「だから、酒飲みは嫌いだよ」と言われそうなほどに酩酊している。私も飲み助のはしくれだけれど、大人になってから(!?)は、こんなふうに天衣無縫に酔えたことは一度もない。どうしても、どこかで自制の心が働いてしまうのだ。山口瞳の言った「編集者の酒」の癖が、すっかり身に染みついてしまっているからだろう。作者が、うらやましい。でも、子供のころ(!?)には、この人みたいに酔ったことはある。気がつくと、深夜の道ばたで寝ていた。なんだかヤケに顔が冷たいなと思ったら、雪が降っているのだった。PR誌「味の味」(1999年11月号)所載。(清水哲男)




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