October 30101999

 水のなき湖を囲へる山紅葉

                           深谷雄大

者は旭川市在住。前書に「風連望湖台吟行」とある。「風連望湖台」とは、どこだろうか。北海道には無知の私だから、早速ネット検索で調べてみた。と、「北海道マイナー観光地ガイド」というページが出てきて、名寄市近郊であることがわかった。いわゆる上川地方だ。札幌からは、高速道路を使えば車で3時間10分ほどで行けるとある。「風連(ふうれん)望湖台自然公園」という水郷公園になっていて、見える湖は「中烈布湖」であることまでは判明した。が、後の情報は希薄で、湖の説明もなければ、読み方も書いてない。はなはだ不親切。「マイナー」だからこそ、きちんと説明すべきなのに……。そんなわけで、句が生まれた環境はわからない。それでも私が魅かれたのは、水のない湖(うみ)を囲む紅葉という構図そのものに、作者のリリカルなセンスのよさを感じたからだ。この句は自然に私を、我が青春の愛唱歌である塚本邦雄の「みづうみにみづありし日の恋唄をまことしやかに弾くギタリスト」(愛唱歌と言いながら表記はうろ覚え。いずれ訂正します)に導いてくれた。塚本歌がフィクションであるという差はあるが、センスのよさという意味では、両者に隔たりはないだろう。『端座』(1999)所収。(清水哲男)




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