August 0381999

 腹当や男のやうな女の子

                           景山筍吉

当(はらあて)は、寝冷えを防ぐための腹巻き。腹掛。小学生の頃まで、私も腹巻きをして寝ていたような記憶がある。小さな子供用のものは、金太郎のように紐をつけて首から吊り、背中で結ぶ。最近はとんと見かけなくなり、夏の項目から削除してしまった歳時記もある。住環境の変化のせいだろう。昼寝のあとの子供が、そのまんまの格好で、よく戸外で遊んでいたものだ。句も、そうした子供の姿をとらえている。金太郎の腹当をしているし、動きも活発だから、男の子かとよく見たら、そうではなかったというわけ。いつの時代にも、こういうタイプの元気な女の子はいるもので、私は好きだ。どうかすると、一緒に遊んでいる男の子が泣かされたりする。小山靖昭に「腹掛の腹ふくらます母の前」があり、子供が母親に蛙のように腹をふくらませて見せている。こちらは、男の子。女性が、はじめてのブラジャーでみずからの乳房の存在を強く意識するように、子供の腹掛けだって、明確に腹の存在意識につながるということだろう。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます