July 0771999

 七夕やまだ指折つて句をつくる

                           秋元不死男

を言うと、今日七夕の句を掲げるのには心理的な抵抗がある。本来は旧暦の七月七日(1999年では8月17日)の節句であるし、梅雨も盛りの頃とて、ろくに星空ものぞめないからだ。でも、東京あたりでは保育園や幼稚園をはじめとして、強引に今日を七夕として行っているので、こんなことで流れに逆らうのもはばかられ、しぶしぶの選句とはあいなった。句意は簡明だ。「指折つて句をつく」っているのは、日頃から俳句の心得がない人というわけで、この場合は子供だろう。七夕の当日になっても、なお短冊に書く句を作りあぐねている。少しは苛々もするが、一所懸命に指を折っている様子が可愛らしい。私が子供だった頃には、短冊に俳句などを書きつける意味を「文字の上達を祈るため」と教えられた。女の子は「裁縫の上達」のためだったらしい。そのために朝早く起き、里芋の葉にたまっている露を茶碗に集めてきて、硯(すずり)の墨をすった。戦前じゃないですよ、戦後の話ですよ。何を書いたかはすっかり忘れてしまったけれど、いっこうに字がうまくならなかったことからすると、心からの真剣な願いを書かなかったからにちがいない。どうも、私には上手に行事にノレない性格があるようだ。(清水哲男)




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