June 2761999

 瓜の種噛みあてたりし世の暗さ

                           成田千空

は瓜といえば「胡瓜(キュウリ)」をさしたそうだが、今では瓜類の総称とする。「トウナス」も「ヘチマ」も瓜である。作者は現代の人だから、この場合は「マクワウリ」だろう。種をちゃんとよけて食べたつもりが、噛みあててしまった。その不愉快な気持ちが、「そう言えば」と世の中の暗さに行きあたっている。最近はロクなことがない、イヤな世の中だと独白したのかもしれない。ところで、作者の言う「世」とは、何をどのようにさしているのだろうか。普通に読んで「世の中」や「世間」、あるいは「社会」と受け取れるのだが、それはそれとして「世」ほどに厄介な概念も少ないなと、いつも思う。例えば私が「世」と言うときに、私の指示する「世」と相手が受けとめる「世」の概念とは、必ずしも符合するとは限らないからだ。「世」のひろがりを自然に世界情勢に結びつける人もいれば、ひどく狭い範囲でとらえる人もいる。お互いに「暗いね」とうなずきあっても、本当はうなずきあったことにはならない。滑稽ではあるが、こういうことは「世の中」でしょっちゅう起きている。ま、「世の中」とはそうしたものかも……。(清水哲男)




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