June 1461999

 ハンカチは美しからずいい女

                           京極杞陽

からいわれているように、女は不可解である。女は、「男の考えていることは単純で、手に取るように分かる」と考えて男を軽視し、自分たちは、不可解であることをいいことに、好きなことをし放題である。だが、男は女が考えるほど単純ではない。……と、これは実はお茶の水女子大で哲学を講じている土屋賢二氏のエッセイのイントロダクションだ。全日空のPR誌「ていくおふ」(86号)に載っていた。私などは臆病だから、怖くてとてもこんなことは言えない。が、たまに遠回しにこんな句をあげることで、単純ではない男の証明を試みてみたくはなる。ただ、よくよく考えてみると、この句もまた逆に男の単純さを証明しているだけのものかもしれない。作者は女の持つ小物にいたるまで、「いい女」としての完全性を求めているわけで、この求め方そのものが単純にして現実離れしているからである。この要求に応えられる女がいるとすれば、彼女は絵空事の世界にしか存在できないだろう。作者が「いい女」にがっかりした気持ちはわかるが、絵空事を現実化したいという欲求を、男の世界では、幼稚にして単純と評価することになっている。『但馬住』(1961)所収。(清水哲男)




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