June 0461999

 君地獄へわれ極楽へ青あらし

                           高山れおな

山れおな(本名)は、本年度「スウェーデン賞」(宮城県中新田町の賞)の受賞俳人。男性。句の漢字と平仮名の字配りを見てもわかるように(「青嵐」ではなく「青あらし」と平仮名にこだわるところ)、なかなかに言語感覚に優れた人だと思う。いわゆるセンスがいいのだ。句の中身を「いい気なものだ」と思ったら、間違いである。「地獄」行きであれ「極楽」行きであれ、どうせ死んだら同じことだと、作者はすがすがしい青嵐のなかで感じているだけのことなのだから……。「地獄」と「極楽」に分かれるということは、現世でしか一緒にいられないという思いを強くしていることでもある。君を「地獄」行きと言っているのは、自分を「地獄」行きと規定したら「詩」にならないとわかっているからだ。本当は、どっちだっていいのだけれど、作者はみずからの「詩」の発現のためにだけ、こう詠んでいる。この人の俳句としては、必ずしも良い出来ではないかもしれない。が、私はこの飛び上がり方が、今後の俳句界にはよい影響をもたらすような気がしている。『ウルトラ』(1998)所収。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます