June 0261999

 万緑に黄に横に竹四つ目垣

                           上野 泰

覚的に面白い句。「黄に横に竹四つ目垣」の、それぞれの漢字をよく見てみると、ほとんどが縦横に垂直な線で構成されていて、なるほどいかにも「四つ目垣」である。さしたる発見もない句だけれど、なんとなく可笑しい。句の背後で、きっと作者もほくそ笑んでいることだろう。気取って読むと、モンドリアンの絵画にも通じる構成の妙ありとでも言いたくはなるが、ま、この読み方はいささか牽強付会に過ぎる。とりあえず、こういう俳句も「あり」ということだ。昨今はブロック塀の進出が著しく、四つ目垣も昔のようには見られなくなった。そもそも家庭の垣根という発想やオブジェが都会の産物であり、他の産物と同様に、垣根もまた都会の文法の変化とともに変わっていく。ちかごろの都会の自治体では、町に「緑を取り戻す」ために、ブロック塀から四つ目垣などに作り替える家には助成金を出すところも出てきた。しかし、こうした助成金は作り替えるときの費用の一部になるだけなのであって、その後の垣根の手入れなどについてまで面倒を見ようとはしていない。これでは、簡便なブロック塀に勝てるわけがない。「黄に横に竹四つ目垣」の景観を再現したいのならば、この他にも考えるべき点は山ほどある。『佐介』(1950)所収。(清水哲男)




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