February 2321999

 東京の雪ををかしく観て篭る

                           山形龍生

前市から出ている日刊紙「陸奥新報」に、藤田晴央君の詩集『森の星』(思潮社)の書評を書いた。掲載紙(2月16日付)が送られてきて、一面の記事で津軽の雪の凄さに驚いていたら、片隅に俳句のコラム(福士光生「日々燦句」)があって、この句が載っていた。以下、福士氏の解説を引用しておく。「映像は、雪に襲われた都民の醜態・不様。「観て」を--対岸の火事を囃す群衆のように--と解せば「をかし」は不様に向けたものだが、それでは雪国に住む者の狭量。雪に対して用心深い津軽人の作者には、不様の原因である無防備が不思議でならないのだ」。「都民の醜態・不様」とはいささかケンのある物言いだが、なるほど、雪国の人からこのように言われても仕方のないところは、たしかにある。ただし、この句は「無防備が不思議」などとおためごかしを言っているのではなくて、わずかの雪に滑ったり転んだりとあわてふためく都民の姿が、単純に可笑しいと笑っているのである。この笑いには皮肉も風刺も、そしてなんらの敵意も含まれてはいない。素直で素朴な笑いなのだ。そう読まないと、句がかわいそうである。「篭る」は「こもる」。新聞記事に戻れば、2月15日の青森市の積雪132センチは「平成で最高」とあった。(清水哲男)




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