January 2011999

 らあめんのひとひら肉の冬しんしん

                           石塚友二

ーメンを「らあめん」と書き、チャーシューを「ひとひら肉」と書いて、寒い日にラーメンを食べる束の間のまろやかな至福感を表現している。作者が食べているのはどんなラーメンかと想像して、たぶん日本蕎麦屋や饂飩屋などのメニューに、ついでのように載っている種類のものだろうと思った。ホウレンソウの緑が濃く、絶対に入っているのがナルトである。麺の量は少なく、メンマも多くない。蕎麦仕立て風ラーメンとでも言うべきか。いまでも、たまにお目にかかることがあるが、これがなかなか美味いのである。味が鋭くないだけに、ほんわかとした気分が楽しめる。そんな店に座っていると、元気よくガラス戸を開けて子供が学校から帰ってきたりする。これで暖房がストーブだったら申し分ないのだが、さすがに今では望むべくもないだろう。こうした店で、もう一つ美味いのがカレーライスだ。妙に黄色かったりするけれど、あの安っぽい色彩がなんとも言えないのである。ただ、不思議に思うのは、必ずスプーンがコップの水に漬けられて出てくることだ。何故なのだろうか。この水は飲んでもよいのかと、いつも戸惑いながら、結局は飲んでしまう。(清水哲男)




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