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January 0211999

 初髪の尻階段をのぼりゆく

                           柳家小三治

髪は、新年はじめて結い上げられた髪のこと。主として島田など日本髪を言う。襟足も美しく和服姿と調和して、男どもは目の保養をする。中年の初髪も凛としてよいものだが、やはり若い女性の匂い立つような風情は絶品だ。この姿を素直に詠めば、たとえば「初髪の娘がゆき微風したがへり」(柴田白葉女)というところだろうが、作者は落語家らしく(いや「男らしく」と言うべきか)、ちょいとひねってみせた。地下鉄の階段かエスカレーターか、あるいはデパートのそれであろうか。作者の目の前に、初髪の女性の大きなお尻がのぼってゆくというわけで、これまた絶景なれども、いささか鼻白む。と同時に、なんだか嬉しいような気もする。正月風景のスナップ句に、かくのごときローアングルを持ってきたところが愉快だ。柳家小三治は、ここ十年ほどの落語界のなかでは私が最も好きな人で、やがて名人と言われるようになる器だと思う。高座の面構えもいいし、彼の話芸には客に媚びる下品さが微塵も感じられない。かといって名人面をぶら下げているわけでもなく、自然体なのだ。この句においても、また然り。一つ間違えれば下品になるところを、水際で自然にすっと本能的に体をかわしている。すなわち、楽しき人徳の句なのである。作者は昭和十四年(1939)己卯生まれ。年男だ。「うえの」(1999年1月号)所載。(清水哲男)




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