December 05121998

 日光写真片頬ぬくきおもひごと

                           糸 大八

光写真は冬の季語。「青写真」ともいい、子供の冬の遊び。漫画のキャラクターなどが黒白で印刷されたネガに印画紙を重ね、その上にガラス板を置き、日光に当てて焼き付ける。水洗いすると、絵が浮き上がってくる種類のものもあった。いまではまったく廃れてしまい、新しい歳時記では削除されている。私の子供の頃の少年雑誌の新年号には、必ず付録についていて、楽しみだった。ただし、ネガの枚数よりも印画紙が少なく、どれを焼き付けるかをセレクトするのが大変だった。ま、それを考えるのも、楽しみの一つだったけれど……。ところで、この句の子供は、かなり大人びているようだ。低い冬の日に片頬を照らされながら、完全に日光写真に没入してはいず、何か他のことを思っている。かすかに芽生えはじめた恋心にとらわれていると読んだのだが、そうなると、この少年にとっての日光写真遊びも、この冬あたりで終わるということだ。いつまでも子供っぽくはいられない少年のありようが、的確に捉えられている。どんなに熱中している遊びでも、いつかは終わる。それっきりで、生涯思いださない遊びもあるだろう。(清水哲男)




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