October 151998
欠席の返事邯鄲を聞く会へ
田川飛旅子
邯鄲(かんたん)の鳴き声はルルルル……と、実に美しい。だから「一夜みんなで楽しもうじゃないか」ということになったりする。新聞などにも、よく案内が載っている。そんな風流趣味の催しに、作者は欠席の返事を書いたところだ。どんな理由からだろうか。折り悪しく先約があったのかもしれないし、単に面倒だったのかもしれない。そのあたりを読者の想像にゆだねているところが、句の眼目だ。句の勢いからすると、欠席の返事が逡巡の果てに書かれた感じはしない。すらりと「欠席」なのだ。さっぱりしている。年令のせいだと思うが、最近の私もいろいろな会にすらりと「欠席」が多くなった。面倒という気持ちもあるが、出席したところで何か新鮮な衝撃が待ち受けているわけじゃなし、会の成り行きが読めてしまうような気持ちがするからである。高屋窓秋に「さすらひて見知らぬ月はなかりけり」(『花の悲歌』所収)という凄い句がある。ここまでの達観はないにしても、ややこの境地に近い理由からだと思いはじめている。『邯鄲』所収。(清水哲男)
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