September 2691998

 山陰のじやじやじやじや雨や秋の雨

                           京極杞陽

じ秋に降る雨でも、その土地によって風情は違う。山陰は直撃は少ないにしても、台風の影響をとても受けやすい地方だから、作者が言うように「じやじやじやじや」と音立てて降ることが多い。とくにこの時期には、陽気とまではいかなくとも、気持ちよいくらいに「じやじやじやじや」と降る。かつてのヒット曲「湯の町エレジー」(舞台は伊豆だった)のように、しっとりと「どこまで時雨れゆく秋ぞ……」などと、情緒的にはいかないのである。けれども、こういうことは土地の人ではない誰かに言われてみないとわからないことで、山陰の人は、秋の「じやじやじやじや雨」が当たり前だと思っている。そこに、作者は気がついたわけだろう。その意味からすると、世の歳時記が「秋の雨」を季語として「秋雨はどこかうそ寒く」などと書いているのは気配り不足と言おうか、昔の京都中心の季節感にとらわれすぎている。あなたがお住まいの地方の秋の雨は、どんな感じで降るのでしょうか。私の暮らす東京では、うーむ、やはり京都と変わらない「しとしと雨」でしょうかね。『さめぬなり』(1982)所収。(清水哲男)




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