August 0281998

 重き雨どうどう降れり夏柳

                           星野立子

立や梅雨ではなく、本降りの夏の雨である。三橋敏雄の句にも「武蔵野を傾け呑まむ夏の雨」とあるように、気持ちのよいほどに多量に、そして「どうどう」と音を立てて豪快に降る。気象用語を使えば「集中豪雨」か、それに近い雨だ。そんな雨の様子を、夏柳一本のスケッチでつかまえたところが、さすがである。柳は新芽のころも美しいが、幹をおおわんばかりに繁茂し垂れ下がっている夏の姿も捨てがたい。雨をたっぷりと含んだ柳の葉はいかにも重たげであり、それが「重き雨」という発想につながった。実際に重いのは葉柳なのだが、なるほど「重き雨」のようではないか。この類の句は、できそうでできない。ありそうで、なかなかない。うっかりすると、句集でも見落としてしまうくらいの地味な句だ。が、句の奥には「俳句修業」の長い道のりが感じられる。作者としては、もちろん内心得意の一作だろう。夏の雨も、また楽しからずや。『続立子句集第二』(1947)所収。(清水哲男)




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