July 1971998

 昼寝猫袋の如く落ちており

                           上野 泰

わずも「にっこり」の句。猫の無防備な昼寝はまさにこのとおりであって、人間サマにとっては羨ましいかぎりである。あまりにも無防備なので、ときには人間サマに踏みつけられたりする不幸にも見舞われる。それにしても、そこらへんに落ちている袋みたいだとは、いかにもこの作者らしい描写だ。言われてみると「コロンブスの卵」なのであって、「なあるほど」と感心してしまう。無防備という点では、人間の赤ちゃんも同じようなものだろうけれど、どう見ても袋みたいではない。袋は猫にかぎるようだ〔笑〕。どういうわけか、作者には昼寝の句が多い。「魂の昼寝の身去る忍び足」。もちろんこれは人間である作者の昼寝なのだが、上掲の句とあわせて読むと、今度は人間の「魂」がなんだか猫みたいに思えてきて面白い。これから昼寝という方、あるいは昼寝覚めの方、自分の寝相は何に似ていると思われるでしょうか。『佐介』〔1950〕所収。(清水哲男)




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