July 1671998

 祭まへバス停かげに鉋屑

                           北野平八

スを待つ間、ふと気がつくとあちこちに鉋屑〔かんなくず〕が散らばっている。どこからか、風に吹かれてきたものだろう。一瞬怪訝に思ったが、そういえば町内の祭が近い。たぶん、その準備のために何かをこしらえたときの鉋屑だろう。そう納得して作者は、もう一度鉋屑を眺めるのである。べつに祭を楽しみにしているわけではなく、もうそんな季節になったのかという淡い感慨が浮かんでくる。作者は私たちが日頃つい見落としてしまうような、いわば無用なもの小さなものに着目する名人だった。たとえば、いまの季節では他に「紙屑にかかりしほこり草いきれ」があり、これなども実に巧みな句だと思う。じりじりと蒸し暑い夏の日の雰囲気がよく出ている。北野平八は宝塚市の人で、桂信子門。1986年に他界された。息子さんは詩を書いておられ、いつぞや第一詩集を送っていただいたが、人にも物にも優しい詩風を拝見して、血は争えないものだなと大いに納得したことであった。『北野平八句集』〔1987〕所収。(清水哲男)




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