June 2461998

 蜜豆は豪華に豆の数少な

                           川崎展宏

党ではないのに、無性に蜜豆を食べたくなるときがある。寒天の口当たりが好きなのと、なんだか色々とゴチャゴチャ入っている様子が目に楽しいからである。蜜豆の豆は茹でた豌豆(えんどう)。ネーミングからすると豆が主役みたいだが、豆単体では美味とは言えず、要するに何が主役なのかわからない食べ物である。したがって「豪華に少ない」という形容矛盾は、蜜豆に限っては矛盾しないというわけだ。豆が少なく感じられるほどに、色とりどりの脇役(?)がどっさり入っている楽しさ。なるほど「豪華に少ない」としか言いようがない。作者の新発見である。つまり、詩である。蜜豆の句で有名なのは、山口青邨の「蜜豆の寒天の稜の涼しさよ」だ。なるほどと私も思うが、この人、そんなに蜜豆が好きではないような気がする。食べたいという気持ちよりも前に、よい句にしたいという気取りが透けて見えている。『義仲』(1978)所収。(清水哲男)




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