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June 1461998

 太初より昼と夜あり蛍狩

                           矢島渚男

者の夫人・矢島昭子さんに『山国の季節の中で』(紅書房・1998)という瀟洒なエッセイ集がある。信州での季節感に富んだ生活を折りに触れて綴ったもので、それぞれの文末には渚男の句が一句ずつ添えられている。この句は「蛍の頃」という文章に記されたものだ。「蛍火はどこかに忘れて来てしまった大切なものを思い出させてくれるような神秘の色だ。自分が生まれる前に出会ったような、夭折の天才たちが漂っているような、さまざまなことが湧いてくる」。ここで、文章と句がしっくりと照応している。ところで昭子夫人の子供の頃の蛍狩の思い出として「家の裏の葱畑から太そうな葱を一本折ってきて、それが蛍籠になる」とあるけれど、葱が蛍籠になるとは初耳だった。私の山口の田舎では、麦藁を編んで作るのが一般的だったが、工作の得意な友人は竹製のゴージャスな蛍篭を作ったりした。蛍狩にまつわるエピソードは多い。わが弟、小学生の昶が夢中になったあまりに、肥だめに転落した事件はいまだに語り草となっている。(清水哲男)




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