May 2851998

 目つむりていても吾を統ぶ五月の鷹

                           寺山修司

節は五月。紺碧の空高く、一羽の鷹が悠々と旋回している。見上げていると、雄々しい鷹の気概が地上の矮小な心の持ち主を叱咤し、律しているように感じられる。そのあまりにも雄渾な鷹の姿が目に焼きついて離れず、床についたいまも自分を支配しつづけてやまない……。「統ぶ」は「すぶ」。句意はこのようなものだろうが、作者十代の作品というから驚く。描きたい世界を描いて、過不足なく完璧である。一般に鷹は冬鳥とされ種類も多いから、五月に舞う鷹といっても、具体的なイメージは湧いてこない。おそらくは作者も、具体的な鷹を指し示したつもりはなかっただろう。「鷹」という言葉から連想される普通の映像であればよく、現実的に鷹が飛んでいたというよりも、寺山修司という個性が理想的な鷹を創造して、大好きだった五月の空に飛翔させたのである。『われに五月を』(1957)所収。(清水哲男)




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