May 2251998

 初松魚燈が入りて胸しづまりぬ

                           草間時彦

会の人が初松魚(はつがつお)に出会うのは、たいていが小料理屋か酒場だろう。この季節、どこの店に寄っても、天下を取ったように「初松魚(初鰹)」の文字が品書きに踊っている。私などもその一人だが、さしたる好物でもないのに、つい注文してしまったりする客は多い。初物の魔力だ。ところで、作者は顔馴染みか常連のよしみで、開店前の酒場に入れてもらったのである。鰹が入ったという店主のすすめに注文したまではよかったが、まだ入口に燈の入っていない店内というものは、どうも落ち着かない。このあたり、酒飲みの人にはよくわかるだろうが、いつもとは違う肴を前にすればなおさらに落ち着かない気分である。そうこうするうちに、やっと表に燈が点った。やれやれ、という心持ちの句。間もなくだんだんと、見知った顔も入ってくるだろう。そして、みんなが「初松魚」に一瞬顔を輝かせるだろう。(清水哲男)




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