May 1151998

 高根より礫うち見ん夏の海

                           池西言水

水(ごんすい)は江戸期の人。前書に「比叡にて」とあるから、この海は琵琶湖である。陽光にキラキラと輝く湖面が目に見えるようだ。石を投げても届くわけはないのだが、人は高いところに登ると、どういうわけか何か投げたくなる。子供っぽいといえば子供っぽいけれど、自然のなかで解放された気分とよくマッチしている。もっとも、今では危険なので、かなりの山奥でもこんな稚気も発揮できなくなった。私が子供だったころは、遠足で山に登ると、必ず礫(つぶて)の打ち合いっこになった。遠投競争だ。憧れのプロ野球投手の投球フォームを真似て、飽きもせずに放りつづけたものである。そして、川や湖に出れば石での「水切り」。西鉄・武末投手のサブマリン投法で投げるのだ。ところで、この元禄の俳人は、このときどんなフォームで石を投げたのだろうか。句の中身とは無関係だが、私としてはとても気になってしまうのである。『前後園』(元禄二年・1689)所収。(清水哲男)




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