May 0951998

 反り合はぬ花のなきかに霞草

                           佐藤博美

屋でちょっとした花束をこしらえてもらうと、注文をつけないかぎり、まず霞草が外されることはない。それほどにこの花は、どんな花とも相性がよい。作者が言うように「反り」の合わない花はないみたいだ。ただし、この句はそれだけのことを言っているのではなくて、霞草のように誰とでも調子を合わせられない自分自身の「感性」を、いささか疎んじているのでもある。そして一方では、霞草がどんな花とも付き合えるとはいっても、それはしょせん引き立て役にすぎないではないかという小さな反発心もあるように思われる。そのあたりの微妙な心の揺れ具合が、この句の読みどころだろう。ところで、本サイトが定本として参照している歳時記には、霞草の項目がない。花屋には一年中出回っているからだろうが、本来は初夏の花だ。当サイトでは「夏」に分類しておく。『私』(1997)所収。(清水哲男)




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