May 0751998

 初夏だ初夏だ郵便夫にビールのませた

                           北原白秋

正十五年発表の白秋の俳句。この頃、白秋は荻原井泉水と論戦あり、そのせいもあってか、しきりと自由律俳句を作っている。それが変な俳人の句よりも面白い。また、白秋にはビールの句が多く(ビール好きだったのか)、これも珍しい。ビールの句を二句。「ビールだコップに透く君の大きい影」「桜は白いビールの空函がたくさん来た」。これで見ると、ビールを函入りでとっているのがわかる。いま、キリン・ビールの明治・大正・昭和三代の復刻ビールというのが大ヒットしているそうだが、この白秋のビールはもちろん大正のそれである。(井川博年)




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