April 2041998

 すかんぽのひる学校に行かぬ子は

                           長谷川素逝

原白秋に「すかんぽの咲く頃」という童謡があり、歌い出しは「土手のすかんぽジャワ更紗……」である。すかんぽ(酸葉)は、歌の通りに、昔は川の土手や野原などに密集して生えていた。歌は小学生たちの学校への行き帰りの情景を生き生きと描いたもので、句はこの童謡を踏まえていると思われる。詠まれている子は、今で言う登校拒否児とは違って、目覚めてからふとサボりたくなったのだろう。家にいると叱られるので、一応登校するふりをして近所の河原で所在なく時が過ぎるのを待っているのだ。こんなことなら、学校に行ったほうがよかったかな。そんな後悔の念もわいてくる。しかし、春の時間は遅々として進んでくれない……。そして作者にも、同様な思い出があるのかもしれなく、むしろ微笑してそんな子供を眺めている。なんだか、大人でも仕事をサボりたくなるような、春の真昼時だ。最近では「すかんぽ」と言っても、知らない人が増えてきたのには寂しい気がする。(清水哲男)




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