March 1531998

 ファインダーてふ極小の窓の春

                           林 翔

者の林翔(はやし・しょう)は八十四歳。1940年(昭和15年)に「馬酔木」入会というから、本格的な句歴は六十年に及ぼうとしている。カメラの極小の窓からは、どんな春が見えたのだろうか。最近気がついたことだが、カメラを片手に散歩する高齢者の何と多いことか。有名な公園などでは、「極小の窓」から覗いている人の邪魔をしないようにするのが一苦労だ。たいていの人は、植物を被写体にしている。間違っても、行きずりの美人を撮ったりはしない。かつて稲垣足穂が「人間の興味は、歳を取るにつれて動物から植物に、さらには鉱物へと移っていく」と言ったのは、本当だった。私はまだまだ美人は好きだけれど、だんだんとそうなりつつあることも否定できない。たまにデジカメを持って、近所をウロウロする。ひとりでに、好みの花ばかり探している自分に気がつく。『あるがまま』(1998)所収。(清水哲男)




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