February 2021998

 初心にも高慢のあり初雲雀

                           原子公平

雀の別名は「告天子」。空高く勢いよく上がっていく様子は、まさに天のありかを告げているようだ。今年も、そんな雲雀の姿を目にする季節がめぐってきた。進学や就職の間近い時期でもあり、作者は雲雀の上昇する様に「初心」を重ね合わせているのだが、他方で世に言われる「初心忘るべからず」の純心を疑っている。斜めに見ている。言われてみれば、なるほど「初心」に「高慢」は含まれているのだと思う。おのれの身の丈など高慢にも省みない「野望」がないとは言えないからだ。だからこその「初心」とも言えるのだが、作者は若き日の自分を振り返って、後悔に近い念を覚えているようだ。過去の自己のありようへの嫌悪の心……。年齢を重ねてなお、このように鬱屈せねばならない人間とは、まことに悲しくも淋しい生き物ではないか。酒でも飲まないとやりきれない。そんな気分になってしまう。『酔歌』(1993)所収。(清水哲男)




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