February 1121998

 受験期の教師集まりやすきかな

                           森田 峠

師の側から受験期を詠んだ句。作者は高校教諭(国語科担当)であったから、この時期は多忙だったろう。教え子の進学希望に際しては、いろいろな科目の教師たちにも相談をしなければならない。試験が終ったら終ったで、生徒たちの出来が気になる。何かというと、集まることが多くなる。職員室は、受験一色だ。職員室ももちろん一つの社会であるから、さまざまな人間関係が渦巻いている。それが受験という一大イベントの季節をむかえると、日頃の人間関係は良くも悪くも「水入り」となる。否も応もなくなってしまう。そんな教師たちのひそやかなドラマを、生徒は知らない。知らないから、やがて「賀状来ずなりし教へ子今いづこ」などということになりがちだ。私もこの正月に、恩師から先に賀状をいただくという大失態をやらかしてしまった。『避暑散歩』(1973)所収。(清水哲男)




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