December 27121997

 輪飾のすいとさみしき買ひにけり

                           皆吉爽雨

角などのちょっとした空き地に、仮設された飾売の店が登場すると、歳末気分は一段と盛り上がる。クリスマス・セールでも同じことだが、私たちの生活感覚は、商売人の感覚によって染め上げられるところも大きい。飾売はたいてい盛大に焚火をし、大声で景気をつけている。買うつもりもないのだけれど、なんとなく吸い寄せられてしまうときがある。作者も、たぶんそんな気分だったのだろう。輪飾にしても注連縄にしても、清楚な美しさはあるが、華美なものではない。見ているうちに、歳末特有の感傷も手伝って、それらがふっと(すいと)淋しいものにも見えてくる。それで、買う気になったというわけだが、年の瀬の人の心の微妙な動きをとらえた名句だと言えよう。余談だが、中学時代に投稿していた「毎日中学生新聞」の俳句の選者が爽雨だった。毎週のように採ってもらったことを思い出す。現代俳人の皆吉司は、爽雨の実孫にあたる。はるばると来つるものかな。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます