December 25121997

 受付に僧ひとりゐて賀状書く

                           茨木和生

意先などに出す年賀状の宛名書きも、暮れのサラリーマンの仕事だ。忙しさの合間をぬって書くことになる。普段のデスクワークとは違うので、なんとなく落ち着かない。ふと、フロアの受付のほうに目をやると、黒衣の僧侶が立っているのが見える。当社に、何の用事があるのだろうか。これも、普段とは違う光景だ。気になりながらも、とにかく書いてしまわなければと、またペンを走らせるのである。ちょっとした異時間と異空間にいる気分を、受付に僧侶をひとり立たせることで巧みに表現した句だ。……と読むのは強引な深読みで、そのまま素直に「寺の受付」での光景と読むべきかもしれない。歳末の私という一読者の焦燥感が、せっかくの俳句をねじ曲げたかとも思う。どうだろうか。(清水哲男)




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