December 19121997

 金色の老人と逢ふ暮れの町

                           平井照敏

和50年代の句でしょう。不思議な感触の句である。この金色の老人は何者なのであろうか。怪人二十面相の黄金仮面か、それとも単なる夕日に頬を輝かせているホームレスの年寄りか、あるいはこの庶民の難局の救済にあらわれた菩薩のたぐいなのだろうか。謎が謎を呼ぶのである。初期の石川淳の小説には、よくこうした不思議な人物が現れたが、それらは終戦直後の焼け跡、闇市によく似合っていた。この句の作られた50年代には、本当の金色老人があちこちにいたのであるが、バブル崩壊後のいま、彼等はどこにいったのであろうか。『天上大風』所収。(井川博年)




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