December 11121997

 燃えつきし焔の形シクラメン

                           田川飛旅子

治時代に渡来した外国花。別名を「篝火花(かがりびばな)」という。この句のとおりに、燃え尽きる直前の焔(ほのお)が、パッと明るくなるような美しい姿をしている。しかも、こちらの焔は長持ちする。私の好きな花のひとつだ。クリスマス近くになると花屋の店先を飾るので、冬の花と思っている人も多いだろうが、元来は春の花だ。したがって、季語も春。布施明に「シクラメンのかほり」という歌があって、いったいシクラメンに香りがあるものかどうかと話題になったことがある。物好きとしては花びらに鼻をくっつけてかいでみたが、まずは無臭というべきであろう。ところで、イタリアではシクラメンの球根を放し飼いの豚が食べるので、「豚の饅頭」と言うそうだ。だから、この歌だけはイタリア語に翻訳しないほうがよさそうである。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます