December 07121997

 十二月まなざしちらと嫁ぎけり

                           中尾寿美子

二月に結婚式を挙げるカップルは少ないだろう。短くない私の人生でも、一度も出合ったことがない。相手方の急な転勤話など、よほどの事情でもないかぎり、この忙しい時期の結婚式は顰蹙をかうことになる。この句の場合はどうなのだろうか。その事情のほどは、花嫁の「まなざしちらと」に万感の思いとして秘められている。もちろん、作者には事情が飲み込めているのだろう。たぶん、列席者も多くはない淋しい式である。だからこそ、花嫁にはより幸せになってほしいと、作者は切に願っているのだし、共に句の読者もそう思うのだ。(清水哲男)




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