December 02121997

 短日の燃やすものもうないかしら

                           池田澄子

要の物を庭で燃やしている。すべてが灰になりかかった頃に、ふと頭をかすめた言葉。この際だから、日のあるうちに燃やすものは燃やしてしまわなければ……。ゴミの収集日と同じで、主婦ならば誰しもが日常的に思うことだ。客観的にはそんなに切実な思いであるはずもないが、この一瞬の作者にとっては切実なのである。その真剣さがこのように書きとめられたとき、句は微苦笑の対象となった。作者の句は肩肘はらない発想が魅力であり、それらの多くは口語文体を取り入れる技法によっているものだ。いまの若い俳人にも口語で書く人は多いが、作者のそれには到底及ばない。何故なら、池田澄子は自分を飾るために俳句を書いているのではないからである。『池田澄子句集』(1995)所収。(清水哲男)




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