November 29111997

 町落葉何か買はねば淋しくて

                           岡本 眸

には、こういう発想はない。もちろん故なく淋しくなることはあるが、そんなときにはたいてい居酒屋に立ち寄ってきた。女性の場合には「ヤケ買い」の衝動に駆られる人も多いというから、「淋し買い」もあるのだろう。ちょっとした買い物で心が暖まるのならば、それはそれで素敵な自己コントロール法だと思う。このようなときに、作者はどんな買い物をするのだろうか。この句が詠まれた前年の冬の作品に、こうある。「キヤラメル買つて寒夜故なく淋しめる」。買えば買ったで、より淋しさが募ってしまうこともあるわけで、キャラメルは失敗だった。キャラメルには、どうしても郷愁を誘うところがあるから、独り暮らしの大人の心には毒なのである。『矢文』(1990)所収。(清水哲男)




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