November 08111997

 鳥渡る老人ホームのティータイム

                           山尾玉藻

人ホームとは、どんなところなのだろうか。長生きすれば入ろうと思っているが、正直いって不安だ。集団生活には馴染めない性質で、学校が嫌いだった。しかし、学校には卒業という制度がある。まだしも、そこから近未来的には逃れて生きていける希望がある。老人ホームを出ていくのは、死んだときだけだ。そう考えると、無性に切ない。スティーブン・キングの『グリーン・マイル』を読んでいたら、ホームの仲間よりも若い従業員にいじめられる可能性が高いとわかった。そんなことはともかくとして、この句はいい。余命いくばくもない人たちのお茶の時間に、今年も鳥たちは元気に、委細構わず渡ってくる……。生きる勢いは違っていても、お互いにこのとき「自然体」であることに変わりはない。モダンにでもなく古風にでもなく、作者はありのままの現実をうたい、うたうことに集中している。「俳句研究」(1997年11月号)所載。(清水哲男)




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