October 25101997

 秋鯖や上司罵るために酔ふ

                           草間時彦

鯖は嫁に食わすな。それほどに秋の鯖は脂がのってうまいというわけだが、作者は出てきた秋鯖をそっちのけにして、酒に集中している。上司への日頃の不満が積もり積もって、一言なかるべからずの勢い。いくら美味だといっても、今夜は鯖なんぞを呑気に味わっている心の余裕などはないのだ。会社は選べるとしても、上司は選べない。サラリーマンに共通する哀感を、庶民の魚である鯖を引き合いに出して披瀝しているところが、この句のミソだろう。句の鯖は味噌煮でなければならない。(清水哲男)




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