October 24101997

 天高し不愉快な奴向うを行く

                           村山古郷

高し。気分がすこぶるよろしい。ストレスなんぞゼロ状態で歩いていると、不意にイヤな奴が向こうのほうを歩いていくのが目に入った。とたんに、不愉快になってしまった。奴もきっとストレスゼロ状態なのだろうなと思えるので、ますますイヤな感じになる。それで、足取りも自然に重くなる。……というわけなのだが、なに、先方だって同じことかもしれない。こちらに気がついたら、きっと気分はおだやかじゃなくなるのだろう。ま、いいじゃないですか。せっかくの上天気なのです。人間万歳なのです。この句をはじめて読んだときには、吹き出してしまった。誰もが上機嫌になることを前提にしたような季語「天高し」を、かくのごとく自在に操ることのできる技術を指して、常識では「芸」というのである。(清水哲男)




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