October 20101997

 からしあへの菊一盞の酒欲れり

                           角川源義

子和えの菊とは、菊の花をゆでて食べる「菊膾(きくなます)」のこと。私は三杯酢のほうが好みだ。作者ならずとも、これが食卓に出てきたら一杯やりたくなってしまうだろう。美しい黄菊の色彩が目に見えるようだ。「盞(さん)」は盃の意。山形や新潟に行くと、花弁がピンクで袋状になった「化白(かしろ)」という品種の食用菊が八百屋などで売られている。はじめて見たときは「何だろう」と思った。これまた風味よく美味。見た目から想像するよりもずっと味がよいので、山形では「もってのほか」と呼ばれている。三十代の頃にはよく訪れた山形だが、ここ十数年はとんとご無沙汰である。(清水哲男)




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