October 13101997

 野菊挿しゐて教室に山河あり

                           谷口美紀夫

聞の投句欄はなるべく読むようにしているが、なかなかコレという作品にお目にかかれない。やはり、新聞には「座」がないからだと思う。投句者もひとりなら、選者も孤独だ。お互いに素顔が見えないので、どうしても熱気に欠けてしまうのである。この句は昨日(1997年10月12日)の「朝日俳壇」金子兜太選第一席作品。兜太の評には「類想はあるが、叙述が独特なので紛れることはない。『教室に山河あり』の、正眼に構えた物言いが潔い」とある。その通りであり、私も好きになった。が、すぐに飽きてしまいそうなテクニックでもある。新聞俳句欄のレベルではいっぱいいっぱいの、善戦健闘句には間違いないけれど。(清水哲男)




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