October 09101997

 柳散る銀座に行けば逢へる顔

                           五所平之助

の取り柄もない句だが、そこが取り柄。秋風が吹いてくると、突発的発作的に人恋しくなるときがある。誰かに会いたい、ちょっとした話ができれば誰でもかまわない。そんなときに、酒飲みは常連として通っているいつもの酒場に足が向いてしまう。その場所がたまたま銀座だったというわけだが、銀座名物の「柳散る」が作者の心象風景を素朴に反映していて好もしい。五所平之助は『煙突の見える場所』(1953・椎名麟三原作)などで知られる映画監督。そういえば、この句には懐しい日本映画の一場面のような雰囲気もある。(清水哲男)




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