September 2291997

 壷の花をみなめしよりほかは知らず

                           安住 敦

も植物の名に明るくないので、しばしばこういうことになってしまう。壷に挿された数種の花のうちで、わかるのは「女郎花(「をみなへし」あるいは「をみなめし」とも)」だけであるという句。最近では新種の花が増えてきたので、花屋の花を見てもますますわからなくなってきた。横文字の名前が多いのも、覚えにくくて困る。女郎花は『万葉集』にも出てくるし、秋の七草としても有名だ。謡曲に女郎花伝説あり。山城国男山の麓の野辺の名草女郎花の由来として、小野頼風という男の京の愛人が、頼風の無情を恨んで放生川に身を投じたところ、その衣が朽ちて花に生まれ変わったというのである。この伝説を下敷きにして眺めると、女郎花のいささか頼りなげな風情も納得できる。(清水哲男)




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