September 1791997

 はせ川の河童屏風の雨月かな

                           竜岡 晋

せ川は料理屋の名前。親しい友人たちとしめしあわせて、月見で一杯と洒落れこんだ。奮発して、上等の部屋を予約した。……が、あいにくの雨。月見どころか、肌寒くて窓も開けられない。気がつくと、屏風には雨を喜ぶ河童の絵だ。「河童じゃあ、雨も当たり前さ」と、誰かが苦笑する。「俺たちは、いつもこうなる」と、誰かがボヤく。さりげない場面だが、大人の味が滲み出ている。そこらへんの俳句小僧には、作れそうで作れない句だ。ちなみに「雨月(うげつ)」は、雨のためにせっかくの名月が見られないことをいう。(清水哲男)




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