September 1391997

 草いろいろおのおの花の手柄かな

                           松尾芭蕉

来、梅や桜などの木の花は春、草の花はこの季節に多く咲くので秋のものとされてきた。したがって、この句の季語はそのように書かれてはいないが、「草の花」として秋の部に分類すべきだろう。句意は明瞭。草の種類は有名無名さまざまだけれど、それぞれの草がそれぞれに立派に花を咲かせている姿が見事だということである。ニュアンス的には、名も無き花に贔屓している。植物に「手柄」を使ったところも面白い。この言葉は武勲に通じるのでいまでは敬遠されがちだが、芭蕉の時代には、もっと幅広い含みがあったようだ。『笈日記』所収。(清水哲男)




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