September 1091997

 秋晴の踏切濡らし花屋過ぐ

                           岡本 眸

鉄沿線の小さな踏切を、花屋のリヤカーが渡っていく。線路の凸凹に車輪がわずかに踊って、美しい花々が揺れリヤカーから水がこぼれる。こぼれた水の黒い痕。それもすぐに乾いてしまうだろう。見上げると空はあくまでも高く、気持ちのよい一日になりそうだ。都会生活者のささやかな充足感を歌っている。読者もちょっぴり幸福な気分になる。『朝』所収。(清水哲男)




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