September 0891997

 雁来紅や中年以後に激せし人

                           香西照雄

こで雁来紅は「かまつか」と読ませる。そのまま「がんらいこう」と読む場合もある。『枕草子』六七段に「雁の来る花とぞ、文字に書きたる」とあり、要するに葉鶏頭(はげいとう)のことである。職場の同僚だろうか。若いころから温厚で通ってきた人が、中年にいたって急に爆発的に怒りを表すようになった。彼に何が起きたのか。その怒りを色彩に例えると、雁来紅の少々黒味を帯びた紅色に似ているというのだ。「かまつか」という語感も「顔が真っ赤」に通じていて、句にいっそうの深みを添えている。寂しき中年よ。もちろんお互いに、だ。(清水哲男)




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