August 3081997

 冷え過ぎしビールよ友の栄進よ

                           草間時彦

人が栄進した。異例の出世である。そこで、とりあえずのお祝いにと、作者は友人を誘って一杯やりに出かけた。たぶん、二人の馴染みの小さな店だろう。と、出されたビールが、今夜にかぎって冷え過ぎている。生温いビールもまずいが、あまりに冷え過ぎたのも美味くはない。「なんだい、冷え過ぎだよ」と、思わずも口走ってしまう。つまり、自分はあくまでも素直に友の出世を祝福するつもりでいたのだが、冷え過ぎのビールに当たるという形で、どこかに隠れていた妬みの感情が露出してしまったということなのである。サラリーマンの哀しみ。(清水哲男)




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