August 2781997

 音より止むスコール人が歩き出す

                           橋本風車

然の大雨である。あわてて人々は屋根のある場所へと駆けこむのだが、夏の俄雨だからじきに止んでしまう。しばらく避難していると、たちまちのうちに晴れて赤い日がさしてくる。そんな夏の雨はたしかに「音より止む」のであって、まだ少し細かい雨が残ってはいても、音が止みかけると待ちかねた人々が次々に歩きはじめる。古来、こういう雨のことを「驟雨(しゅうう)」と呼んできたが、句の雨は「スコール」と思わずも表現したくなるほどに激しかったということだろう。雨は雨でも、夏季ならではの陽性の雨である。(清水哲男)




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